君想歌
小高い丘から見える京の町。


「凄いでしょ」

眼下に広がる京の町は
だいぶ違って見えた。


吉田が腰を下ろし和泉も
隣に座った。


「ここから花火見える?」

「祇園祭?」

祇園祭で打ち上げられる
花火のことか。

「そう」


彼処から花火は上がるから
指で打ち上げ場所を示す。


「ばっちり」

「じゃここで見ようね」


良い場所見つけた、と喜ぶ吉田。


「稔麿とだけの秘密だから」


「当然」


和泉は吉田の手に右手の小指を
絡ませた。


「約束。祇園祭一緒に行くって」

「俺の誘い信じてる?」


真っ直ぐな和泉の視線を
愛しげに見つめる吉田。


吉田からも和泉の小指に
自分の指を絡めさせた。



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