君想歌

ぱたり、ぱたり。



止めようもない涙が
布団に落ちていく。


「っく……稔麿…」

嗚咽を押し殺して布団を
引き寄せる。

自分が起こした原因が
引き起こした結果。

膝を抱えて、泣いても。

今更誰も助けてはくれない。


この行動はいかに滑稽に
端から見えるだろうか。

稔麿が居なくても生きていける。

その考えは間違いだ。


居ないと、駄目なんだ。


支えを失えば倒れるのは普通。


物だって、人だって。



一年にも満たない
吉田と過ごした日々。


すくった水のように手の間から
落ちていった幸せは二度と。


取り戻せない。













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