君想歌
島原の入り口。

赤い大門を嫌々ながら
和泉は潜る。


同時に周りはますます
落ち着きが無くなってくる。


「まったく。
男は女、酒に弱い……」


ぶつぶつと文句を
しかめっ面で漏らす和泉。

その手を兄のように沖田は
引いて歩いていく。

隣を通り過ぎていく着飾った
遊女を横目で追う。

そんな和泉の姿に土方は
舌打ちをした。


大してお洒落をせず。

女友達もつくらずに。。


「あぁぁ……面倒くせぇ!!」


「うわぁぁあ!!」


むんず、と和泉を引っ掴むと
土方はどかどかと大股で進む。


「下ろせ!何のつもりっ」


和泉は一つに結われた
滑らかな土方の髪を引っ張る。


「痛ぇっ!!何しやがるっ」


「うるさい〜!!
女なんて嫌いだぁぁあ!!」

「あはは。
兄弟みたいですよ!!
土方さんと和泉さん」

じゃれあう様にしか見えない
二人に沖田は笑った。


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