生まれたての放課後。
そんな日の、放課後だった。
委員会の仕事が終わってすぐに、わたしは教室に向かっていた。
夜は寒い。
なるべく早く家に帰りたい。
昼間とは打って変わり、しずかでつめたい廊下を歩いて教室についたとき。
教室のドアはひらいていた。
冬だというのに、無防備にあけっぱなしで。
───先客が、ひとり。
話しかけようと口を開きかけたところで、いつもと様子が違うことに気がついた。
見たことのない表情で窓の外を見つめている。
立ったまま、寒そうな窓の外の一点だけを目で追っていた。
誰かを、目で追っていた。
その表情は、苦い。
普段の顔からはきっと、誰も想像がつかないような顔。
寂しそうで、悲しそうな、顔。
なんだか、そのまま消えてしまいそうで。
つなぎとめるように。
「宏くん」
わたしは一歩、教室に入った。