生まれたての放課後。





しばらく黙ったあと、きょとんとしたまま宏くんは言った。




「なにが?」




誤魔化そうとしてるんじゃないと、すぐに分かった。顔を見れば分かる。


さっきまで自分があんな表情をつくってたこと、気づいてないのかな。

もしかしたら宏くんは意外と鈍感なのかもしれない。



……もう一歩。




「窓の外見て寂しそうにしてた」


「ああ」




気がついたようにつぶやいてもう一度、今度は無表情に外を見る宏くん。


誰を見ているんだろう。





「………前に別れたヤツが外通るの見えたから」



「え?」




思わず聞き返してしまう。


元カノ?




「前、つっても1年前だけど」


「1年前って、中学生のころ?」

「そう。中学んとき」




言いながら宏くんは、がさがさと荷物の整理をはじめた。



中学のときの元カノさんが外を通ってるのを見つけて、目で追っちゃったってこと?


どうしてだろう。






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