だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「俺も!まずは勉強します!それで、もっともっと現場のこと見ていきたいです!松山には負けません!」
その場にいる全員が、呆然と篠木を見つめていた。
多分、このチームの中で一番クールな彼が大声を張り上げて目標を言っている。
同期といういい刺激相手がいることで、篠木の中に『ライバル』意識が芽生えたのかもしれない。
同期であり、ライバル。
これこそ、私達が二人に身につけて欲しかったものだ。
尾上部長と水鳥さんが優しく微笑んでいる。
櫻井さんは冷静な目線を送っているが、目の奥が笑っている。
森川は私に目配せをしてから、じっと二人を見つめていた。
仕事の達成感は、こんなところにも隠れていた。
個室の入り口には暖簾。
入り口を入ってすぐのところに、テーブルが置かれてある。
長方形のテーブルの末席に、二人が向かい合って立っている。
篠木の隣には森川。
松山の隣には私。
お誕生日席から見つめる尾上部長と、その角に座っている水鳥さんと櫻井さん。
なんだかこの空間が、たまらなく素敵なものに思えた。
いてもたってもいられなくなり、私はおもむろに立ち上がった。
みんなの視線を感じたけれど、そんなことお構いなしに、立っている二人の横に向かった。
部長の真向かいに立って、みんなの方を向く。
松山と篠木を手招きで近くに呼ぶ。
そして、がばりと二人を一緒に抱きしめた。
ガタンと椅子から立ち上がる気配がしたけれど、そんなのお構いなしに二人をぎゅっとした。