モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

しかし、いつもと全く
変わらないメリッサの
応対は何も知らないから
こそのものだと、
朔夜は判断した。

それならば、食事だけを
済ませて急いで帰ろうと、
いつもの愛撫もほどほどに、
餌となる人間の記憶や
感覚を鈍らせる麻酔を
施すため、牙を立てる。

ところが、牙を立てた
瞬間、メリッサは
朔夜の胸をやんわりと
押しのけた。

「…なんです?」

「いいえー?ただぁ、
今日のノークス様ったら
気もそぞろっていうかぁ…。
もしかして、今までも
記憶のあいまいな時間は
こういう様子で
過ごされたのかと思ったら、
お仕事とは別のところで
ちょっとひっかかるものが
あるっていうかぁ。」

朔夜の方は、今までと
変わらぬ様子のはずの
メリッサのその言葉に
ひっかかりを覚えた。

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