モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜
「それは大変光栄です、
マスター。」
「マスターが口には
出さずとも奥様を
尊敬しておいでですから、
その影響が我々にも
及んでいるのです。」
二人の返答に朔夜は
複雑そうな顔で
何か言いかけて、
やめた。
従僕との会話など
無かったかのように、
沙羅の方を見て
にっこりと笑みを作る。
「…それで、沙羅。
用事があって
きたのでしょう?
どうしたのです。」
「あ…。ええと…。」
朔夜の支度を整え
終わった二人が
部屋から出ていくのを
見ながら、
急に話を振られた
沙羅は慌てて
用事を思い出す。
「…。ええと…。」
「そのドレスを
見せに来たのですか?」
言い出せず、
口ごもる沙羅に、
朔夜は柔らかな
眼差しでたずねた。