ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下


こうして、私はロップイヤーラビット
『ピョン太』を妹夫婦から、預かり受けることになったのだ。


うさぎなど、好きでも嫌いでもなかったけれど、妹夫婦に連れて来られた『ピョン太』を一目見る途端、その縫いぐるみのような愛くるしさに、私はすっかり魅了されてしまった。


ふわふわとしたベージュの毛皮に垂れた大きな耳。

邪心のない黒い瞳。


『ピョン太』は私の、無味乾燥な生活に彩りを与えてくれた。


私はインターネットで、うさぎ愛好家達と交流を持つようになった。


お互いのうさぎを取った写真を見せ合い、あたかも近所に住む友人かのように親しんだ。


そんな生活は2年間も続き、ある日、突然終わりを告げた。


『ピョン太』が死んでしまったから。


私は、一日会社を休み、うさぎの亡骸に寄り添った。


そして、夜、近くの小さな森林公園に行き、『ピョン太』のベージュ色の身体を土に返した。

凍てつく手で小さなスコップを握って。



すべてが終わり、樹々の間から星のない墨のような夜空を見上げた時、思い出した。


明日は、クリスマス・イブだということを。

会社の忘年会があることも。




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