ヒールの折れたシンデレラ
好き嫌いを聞かれただけで、次々と目の前に寿司が並べられる。
えんがわ、いか、ボタン海老――どれもとびきりおいしく、食べるたびに顔をほころばせていると宗治と大将が嬉しそうに笑っていた。
「かわいらしいお嬢さんですね」
大将が笑顔を浮かべて二人に話しかける。
驚いて口に運びかけていた女将さん特製の茶わん蒸しを“つるっ”とテーブルに落としてしまい慌てて布巾でテーブルを拭く。
ばたばたしている千鶴をみて目を細める。
「坊ちゃんが、女性を連れてこの店に来るなんてね。私も年をとるはずです」
冷やかすような言葉に宗治は言い返す。
「坊ちゃんはやめてよ。もういい歳なんだからさ」
そんな二人の会話を聞きながら千鶴はこの店に宗治が女性と来たのが初めてだと知りうれしくなる。
それと同時にもし妃奈子と別れることなく付き合っていたらここには、千鶴ではなく彼女が座っていたのかもしれないと考える。
宗治が嫌いになって別れた相手ではない。
しかも自分の兄と結婚した相手だ。どんな感情であれ彼の心の中には彼女への思いがまだ残っているんだろう。
その証拠に妃奈子や竜治の話については今まで一度も触れていない。
えんがわ、いか、ボタン海老――どれもとびきりおいしく、食べるたびに顔をほころばせていると宗治と大将が嬉しそうに笑っていた。
「かわいらしいお嬢さんですね」
大将が笑顔を浮かべて二人に話しかける。
驚いて口に運びかけていた女将さん特製の茶わん蒸しを“つるっ”とテーブルに落としてしまい慌てて布巾でテーブルを拭く。
ばたばたしている千鶴をみて目を細める。
「坊ちゃんが、女性を連れてこの店に来るなんてね。私も年をとるはずです」
冷やかすような言葉に宗治は言い返す。
「坊ちゃんはやめてよ。もういい歳なんだからさ」
そんな二人の会話を聞きながら千鶴はこの店に宗治が女性と来たのが初めてだと知りうれしくなる。
それと同時にもし妃奈子と別れることなく付き合っていたらここには、千鶴ではなく彼女が座っていたのかもしれないと考える。
宗治が嫌いになって別れた相手ではない。
しかも自分の兄と結婚した相手だ。どんな感情であれ彼の心の中には彼女への思いがまだ残っているんだろう。
その証拠に妃奈子や竜治の話については今まで一度も触れていない。