ヒールの折れたシンデレラ
「常務のお相手をどちらが務めるかというお話ですわ」

華子が艶香を睨みつけたまま話す。

「こういう華やかな場所では三島さんみたいな年増ではなくて私のような華やかさがないと常務のお相手はできいと言ったのよ」

NGワードを盛り込み艶香が華子に対して攻撃する。

「なんですって。若いだけしか取り柄がないくせに偉そうに。お顔は十人並でしょ」

華子も負けじと言い返す。

「第一今回はわたくしがお相手を務めると事前にうかがっておりますわ」

そういう華子を艶香は鼻で笑う。

「何言ってるんだか。今年は私がエスコートしてもらえるって聞いてたんだから！」

どちらも同じような主張を繰り返しているばかりで埒があかない。

再びヒートアップしてきた二人をお客様まで何事かと遠巻きに眺めるようになった。

どうにかしてこの場を収めなければと、千鶴が焦り始めると背後から「何をやっているんだ」と宗治と勇矢の声がきこえた。

ほっとした瞬間艶香がウェルカムドリンクであるシャンパンを手に持ちあげるのを見て、千鶴はとっさに言い争いをしている二人の前に割って入る。

パシャと耳元で水の音が響きそして冷たい液体が滴り落ちるのを感じていた。

園美の「キャ」と小さく驚く声が聞こえる。
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