ノーチェ
夏の蒸した部屋で
ビールを口に含むとキンキンに冷えたアルコールが舌を刺激した。
エアコンを付け、薫は缶をベッドの脇にある小さな棚の上に置く。
そしておもむろにポツリポツリと言葉を紡いだ。
「…少し、長くなるけどさ。」
「………うん。」
躊躇いがちに前置きする薫に、揺れる唇を見つめるあたし。
きっと薫は
葛藤してるんだ。
自分自身と、ずっと。
それをあたしに話す事で薫の気持ちが少しでも軽くなるなら、と偽善とかじゃなくて
素直にそう思った。
涼しい風が二人の間をすり抜ける。
だけど遅かったのか
汗をかいた缶ビールがテーブルを濡らした。
そんな中、薫は何から話そうか悩んだ様子で少しずつ口を開いた。
「百合子、他に何か言ってた?」
「…ううん、他には特に何も。」