ノーチェ
黒で統一され、相変わらず殺風景な薫の部屋は、無駄に空いてるスペースがやけに目立つ。
小さな冷蔵庫から缶ビールを出した薫は
あたしにも一つ差し出した。
「ありがと。」
飲む気はしなかったが、とりあえず受け取ったあたしは立ったまま薫の後ろ姿を見つめる。
「適当に座って。」
と、ベッドに腰を降ろした薫は綺麗に整えられたタオルケットの上であぐらをかいた。
部屋にプルタブの音が一つ響く。
後を追うようにあたしもビールのプルタブに手を掛けた。
「…悪かったな。」
「え?」
思いもよらぬ薫の言葉にあたしは顔を上げた。
「あいつに、百合子には言っておいたんだけどさ。お前の所には行くなって。」
「…あぁ、うん。」
『…あなたにしか、頼れなくて。』
彼女の揺れる唇が脳裏を過ぎる。