Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 行きがかり上、衛藤と遼太郎も、黒い貫頭衣のようなものを着て、一緒に驚かすことになった。

 しかし、もう文化祭の終わりも近づいている時間帯なので、誰も迷路には訪れない……。

 痺れを切らした二俣が、「誰か呼んで来い」と言い始めると、そう言えば、みのりがまだ迷路を訪れていないことに、クラスの女の子たちが気が付いた。

 それで、みのりが〝カモ〟として連れてこられたというわけだ。


 迷路の中に入ってきたのは、みのり一人ではなかった。でも、遼太郎の方に近づいてきた気配は、誰でもないみのりの息遣いだと思った。

 ずっと暗闇の中にいたので、目は慣れて、人がそこにいるということは分かる。
 みのりだと思われる人の形が背を向けたとき、遼太郎は「ちょっと驚かしてやろう」と、柄でもなくイタズラ心を起こして、腕を回してみのりの動きを封じた。


 掴んだ肩の細さ、鼻孔に入ってくる薫り。


 腕を回した瞬間、遼太郎の感覚のすべてで、みのりであることを確信した。

 確信した時には、遼太郎の腕にはもっと力が入り、無意識にみのりを懐に抱きしめていた。すぐに放すこともできたと思うのに、遼太郎の方の思考も体も硬直していた。


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