Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 遼太郎の体が途端に硬直する。


 歯を食いしばって反応を抑えようとしたが、顔と体の一ヶ所に血液が集まっていくのが分かった。


 小野がみのりに目配せして、会釈をして消しゴムを受け取る。みのりが横を通り過ぎる時に、遼太郎は思わず顔をそむけてしまった。


 だが、みのりはそのままそこを立ち去ってはくれず、遼太郎の横で立ち止まる。その気配に、遼太郎の脈拍が一気に加速を始める。

 みのりは遼太郎の机上の問題用紙を除け、マークシートを一番上に置きなおした。遼太郎は赤い顔を見られまいと顔を上げずに、両手を足の付け根でグッと握った。

 みのりの指先がマークシートのある部分を指し示す。
 みのりが顔が耳元に近寄ってきて、遼太郎はもう心臓が口から飛び出しそうになった――。


「名前。」


 みのりから短く囁かれて、指の先を見てみると、名前を書き忘れている。

 最初に名前を書けと言われていたのに、忘れているこの醜態に、遼太郎は消え入りたくなりながら鉛筆を手に取った。


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