Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「ありがとうございました。」
遼太郎が頭を下げると、みのりは口元をほころばせて、手を振って背を向けた。そして、観客席の通路の階段をトントンとリズミカルに上がっていく。
遼太郎は頭を上げて、その足首の細さを見つめた。
観客の何人かが、みのりが通りすぎた後ろ姿を、振り返って見ている。
――別に、お世辞じゃないんだけど……。
〝先生が来てくれれば充分…〟というのは、遼太郎の本心だった。
9月初旬の全県模試が終わると、次は10月の初めに行われる前期の期末考査が待っている。
私立の推薦狙いの生徒たちは、この考査の成績が指定校推薦の指名を受けるための判定にも、通常の推薦入試の調査書にも反映される。(※)
もちろん、この考査だけが判断材料ではなく、課題の提出なども考慮され、1,2年生時の成績も関係してくるのだが、やはり最後の判断材料となるこの考査の意味は大きかった。
なので、生徒たちは最後の悪あがきをしようと、途端に真剣に授業を受けるようになった。
2期制を取り入れてから、定期考査の範囲が長くなって、生徒たちには負担には違いないが、それを嘆いていても始まらない。とにかくやるしかない。
(※進学する大学や在籍する高校により、状況は異なります)