Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「生徒の前では立派なこと言いながら、実は妻子ある人と不倫していた私に、狩野くんは失望したんじゃない?」
窓枠をぎゅっと握り、視線を逸らしたまま、緊張した面持ちでみのりが訊いた。
確かに、〝不倫〟という響きを聞けば、嫌悪感を感じてもよさそうなものだ。
だけど、妻子という〝障害〟があっても人を好きになることを止められなかったということは、教師と生徒という〝障害〟も乗り越えて想い合える可能性もあるということだ。
「失望なんて…。」
失望どころか、遼太郎は希望が湧いてきた。
それに、立場や常識なども範疇に入れず、そこまで人を好きになれることが、羨ましくさえあった。
みのりにそこまで想ってもらえる人に、今度は自分がなりたいと思った。
「人を好きになるのって、理屈じゃないと思います。」
遼太郎はみのりの境遇についてそう言いながら、自分の想いを投影させていた。
「狩野くんにそう言ってもらえて、安心した…。それに、聞いてもらって、ちょっと気が楽になった。」
みのりは本当にホッとしたような表情を、遼太郎に向けた。
遼太郎の方こそ、みのりがそんな顔をしてくれたことにホッとしていた。