Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
遼太郎は二俣から目を逸らして、グラウンドに生える健気な草を見つめ、顎に生える剃り残しの髭を指でこすった。
「うん。それは事実だ。」
「事実だって…、遼ちゃん……。あの子泣いてたらしいぜ……?」
それを聞いて遼太郎の心は痛んだが、かと言って想いに応えられないことはある。
何より、みのりのあの哀しみに比べたら、小泉智香の失恋などかわいいものだ。
「そうは言っても、ふっくんだって、沙希ちゃんがいるのに、他の子にコクられても困るだろ?同じだよ。」
二俣は口を尖がらさせて、考え込んだ。
「同じって、遼ちゃん。彼女いんのか?誰だよ。」
「……か、彼女じゃないよ。」
突然、遼太郎は赤面する。
「ただ、俺が一方的に想ってるだけで……。」
と、最後の方は消え入るような声になった。
「え!でも。誰だよ?遼ちゃん!俺、初めて聞くぞ!」
「今はまだ言えん!」
好奇心に目が輝きだした二俣から、遼太郎は立ち上がって逃げ出した。
〝好きな人は先生〟
自分にとって初めての感情は、まだ誰にも教えたくなかった。まだ今は、宝物のように胸の中の一番大切な場所に置いて、自分だけで何度も覗いてみたかった。