Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「それじゃ…、続ける?朝寒くなるけど?」


と、みのりが念を押すと、


「まだ、暑いですけど。」


と、遼太郎は学生服の詰襟をパタパタと動かした。
 みのりもそんな遼太郎の仕草を眺め、フッと笑いを漏らす。


「そういえば、狩野くん…。」


 何かを思いついたように、みのりが切り出すと、遼太郎は優しい視線を投げかけた。
 その他意のない素直な視線に、みのりは少し気圧されてしまう。


「……いや、何でもない……。それじゃ、明日の朝ね。」

「はい。」


 みのりが何を言いかけたのか、遼太郎は気になるような面持ちをしたが、とりあえず返事をした。

 みのりは笑顔で一つ頷くと、優美な後ろ姿を見せて、職員室へと入っていった。


――女の子に告白されたでしょ?


 みのりが言おうとしていたのは、この言葉だった。

 この前平野から、遼太郎が告白されたという話を聞いて以来、その真偽を確かめたくてしょうがなかった。

 断ったというのは本当なのか。
 好きな人は、いったい誰なのか…。



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