Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「それじゃ、日本史の個別指導は、もうやめときましょうか。」
みのりは、そう言った瞬間、自分でもショックを受けているのが分かった。
どんなに忙しくても、遼太郎との個別指導はやめたくない――。そう思っていたことを自覚した。
もう遼太郎が、それを必要としていなくても。
「…いや、それは。」
遼太郎も反射的に、みのりの提案を打ち消した。
「まだ、11月の全県模試があるし、それまでは。」
「でも、狩野くん。入試の準備もあるし、大変じゃない?それに、もう個別指導しなくても、狩野くんなら自分で勉強しても十分結果は出せると思うけど。」
心とは裏腹に、みのりの口からはやめる方向の言葉が出てくる。少しでも遼太郎の負担を減らしたい……という気持ちがないわけでもない。
「他のことが大変だから…。その、却って個別指導してもらわないと勉強しなくなるっていうか…。俺だけ、先生に甘えすぎなんですけど…。」
遼太郎の言い方は控えめだったが、個別指導は続けたいという強い意志が感じられた。
内心みのりも、今までの状態が続いてくれることにホッとする。