Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「先生、おはようございまーす。」


 その時、背後からちょっとぽっちゃりした女子生徒があいさつをした。


「あ、おはよう。」


 みのりの手が遼太郎の口から外される。
 手が離されるその瞬間、遼太郎はハッと気が付いた。



「吉長さん、今日部活の練習出られそう?」

「はい、その予定ですけど。」

「まだちょっと体調悪そうね。顔色があんまり…」


 みのりと女子生徒の会話を傍で聞きながら、遼太郎は他のことを考えていた。
 今、自分の口を押えたみのりの左手は、先ほど幾度となくみのりが自分の口を押えていたことを。

 みのりにとっては、取るに足らないことかもしれないが、二俣とみのりが間接キスをしたことさえ気になる遼太郎にとっては、大変なことだった。


――俺も、先生と間接キスか……!?


 口を今度は自分の手で押さえた。その遼太郎の顔に、一気に血が上り始める。


「……2年生ですね。」


 遼太郎は自分の動揺を気取られまいと、みのりが授業に行ってないはずの2年生ということを指摘する。



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