Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 でも、今日の敵は都留山高校ではない。まさか、初戦を落とすことはないとは思うが、一戦一戦が敗けたら終わりの大事な試合だ。みのりはいささか緊張してきて、鼓動が速くなった。


 開始時刻が近くなり、選手たちは試合用のジャージを着て競技場に姿を現した。

 みのりの緊張とは裏腹に、選手たちはリラックスしたいい表情をしている。まるで、この大会が始まるのを心待ちにしていたみたいだ。

 みのりはそこでハッと目がさめる。
 選手たちにとってこれは最後の大会ではなく、夢の花園への始まりなのだと。

 それに気づいたみのりは、遼太郎たちが夢をかけて闘う、この大会の一戦一戦をちゃんと観て、覚えておこうと思った。
 ほんの数ヵ月間だけれども、彼らがその夢に向けて、たゆまぬ努力をしてきたことを知っていたから――。


 試合そのものは、やはり心配することもなく、芳野高校のペースで進んでいった。

 身体の大きな二俣は、相手のチームから次々とタックルの応酬を受けてもものともせず、20mほどを独走し、クロスバーの真下で転がることのないトライを決めた。


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