Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
フィールドは前の試合の後の整備も終わっており、選手も審判も試合が始まるのを待っている。
「仲松先生―!」
競技場に大きな声が響き渡った。
男性の声のそれは、遼太郎のものでも二俣のものでも、江口のものでもなかった。
みのりを呼ぶ声、それも聞き覚えのない声がみのりを呼んだので、咄嗟に遼太郎は声のした方を振り返る。呼ばれたみのりの方も、あまりにも露骨な呼ばれ方をしたので、恥ずかしそうに声の主を探している。
「仲松先生!こっちこっち。」
フィールド脇の本部前に黄色いジャージを着たレフリーがいて、そのレフリーが手を振っていた。
みのりも明るい笑顔で、本部の方へ観客席を降りて行った。レフリーはみのりと同じくらいの年齢で、いかにもラガーマンと言った感じだが、あの体形はバックスだろう。
親しげに歓談しているレフリーとみのりを見て、遼太郎は胸が騒いだ。
「あれ、今日の試合のレフリーか?みのりちゃんの知り合いみたいだな。」
二俣が腰に手を当てて斜に構えて、レフリーとみのりが話すのを、遠目に見て言った。遼太郎は頷きもせず、二俣とみのりを交互に見遣った。