Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
加藤の顔を確かめて、冗談を言っているのだと理解すると、みのりは改めて自分の姿を顧みた。
コーヒーを片手に、足を組んで新聞を読んでいる……。
言われてみれば、オヤジくさいかもしれない。
「オヤジくさくもなりますよ。もうすぐ三十路ですから。この歳で独り身だと、もう枯れちゃって…」
冗談を言ったつもりなのに、みのりがそう自嘲すると、加藤は決まり悪そうに同情が含まれた表情を浮かべて、隣へ座った。
「誰かいい人はいないのかい?」
加藤のこの問いに、みのりはうんざりした。
「うちの親と同じことを言うのは、やめて下さい。」
「ということは、いないんだな。」
加藤のこの指摘に、みのりはただ目をくるりとさせて答えた。
「何でかねー、仲松さん。あんたみたいな人だったら、それなりにモテそうなんだけどね~。」
「何ででしょうねー。それが判れば、手の打ちようもあるんですがねー。」
みのりは半分ヤケになって言った。しかし、加藤は真剣に考えている。
「…うーん、強いて言えば、多分出来すぎる女だからだろうか…男の方が気後れするというか…」
――出来すぎる女……
みのりは絶句した。