Rhapsody in Love 〜約束の場所〜




 もちろん、誉められているとは思わなかった。それに、加藤の指摘は、何となく理解できるような気もする。


「まあ、でも。あんたに言い寄られて、嫌な気になる男もいないと思うよ。気になる人がいたら、自分から行けばいいじゃないか。」


「……そうですねぇ……」


 そうは言っても、その〝気になる人〟がいないのだから、しょうがない…。
 石原が心の中にいるかぎり、〝気になる人〟なんて現れようがない。

 はぁ~っと、みのりは大きなため息を吐いた。


「コーヒー、まだあります?」


 その時、古庄がカップを片手にやって来たので、加藤はみのりの肩を叩いて、入れ違いに席を立った。


「仲松ねえさん。この新聞まだ読んでる?」

「ううん、もう読んでない。どうぞ。」


 古庄はみのりの向かいに座って、コーヒー片手に新聞を読み始めた。

 みのりは、そのあり得ないほど端正すぎる顔を、まじまじと眺める。


――自分から行くって言っても……、何とも感じない人に、迫るわけにもいかないし……。


 たとえ心の中に石原がいても、少しはときめくことのできる男性がいてもいいようなものなのに。
 石原よりももっと好きになれる男性が現れたなら、叶わない想いに心が切り裂かれそうな切なさを味わわなくて済むのに。




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