Rhapsody in Love 〜約束の場所〜




「いえいえ、こちらこそ。狩野くんへの指導にご理解下さり、ありがとうございます。」


 みのりも同じように頭を下げた時、芳野高校のコバルトブルーのジャージを着た選手たちが、肩を組んで円陣を作った。


「あ、始まりますね。」


と、みのりがその辺の適当な席に座ろうとしたので、遼太郎の母が気を利かせた。


「先生、そんな後ろの席じゃなくて、前の方に確保している席がまだありますから、そちらにどうぞ。」


 みのりは後ろの方からひっそりと試合を観戦したいと思っていたのだが、こう言われては断れない。
 遼太郎の母に連れられて、芳野高校の保護者が陣取っていた最前列の席に座った。


 隣に座った遼太郎の母がみのりに話しかける。


「高校に入ってから遼太郎は本当にラグビー三昧で、ほとんど勉強という勉強はしてなかったんですけど、仲松先生に指導を受けるようになってからは机に着く時間も増えて、本当に感謝してます。」


「狩野くんが何事も真面目に取り組んでくれた結果だと思います。いくら指導をしても、最後はやっぱり本人のやる気次第ですから。指定校推薦も決まって良かったですね。」


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