Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 芳野高校がチャンスになったり、得点した時には、みのりの周りからは歓声が上がる。しかし、みのりは息を殺すように、遼太郎の一挙手一投足を見守ることで精一杯だった。

 これでは応援に来た意味がないと思ったが、遼太郎が走り、蹴り、パスし、ぶつかる……一瞬も気を抜けないそのプレーを全て覚えておきたいと、みのりは思った。


 前半は14対7と、1トライ1ゴールの差で芳野高校が勝っていたが、相手も3回戦まで勝ちあがってきているチームだけあって、これまでのように楽勝というわけにはいかないらしい。


 高校生の試合のハーフタイムは5分間しかなく、佐藤や荘野ら1年生が手早く用意してあるスクイズボトルを運ぶと、選手たちは水分補給をし、後半に向けて顧問の江口の話を聴き、プレーの確認し合う。


 遼太郎はみのりの方へ視線を向けることなどなく仲間の言うことに頷き、自らも仲間を、特に疲れが見え始めている後輩を叱咤激励していた。


 選手たちは再び肩を組み円陣を作ると、気合の一声を上げグラウンドへ駆けていく。

 その時、遼太郎ではなく二俣が、みのりの方に振り向き、黄色いマウスガードを見せてニカッと笑い親指を立てた。


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