Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


 チャイムがなって今日の授業も終わり、掃除の時間になった。


「さーて、清掃指導にいきますか。」


古庄が立ち上がると、みのりも立ち上がった。


「はい、行きましょう。」


 新聞を元の場所へと戻している古庄のコーヒーカップを、自分の物と一緒にシンクで洗う。


「ああ!すみません。ねえさん。」


 古庄が極上の爽やかな笑顔で言葉をかけると、みのりは振り返り、にこりと口角を上げた。

 洗い終わって手を拭くと、心の中にわだかまる悩みを封じて、モードを切り替える。そして、みのりも颯爽と廊下を歩いて、清掃場所へと向かった。



 6月2日は、初夏の爽やかさとは程遠い、ほの暗く雨がしのつく日になった。
 箏曲部の練習場所は、高校の敷地の端にあるセミナーハウスにある。

 箏曲部の練習は、3年生を中心にとても熱が入っていた。運動部の子に限らず文化部の子も、3年生はこの6月に行われる大会を最後に引退する。
 琴をつま弾く真剣な表情は、その気迫を物語っていた。4月に入部した1年生たちも、足を引っ張らないように必死な様子。

 そんな練習の内容の濃さに引き替え、練習に付き合うだけで、何もすることのないみのりは、手持ちぶさたで無為な時間を過ごした。



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