Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
塩尻が3回笛を吹くと、マッチドクターがフィールド内へとやってくる。その場で処置をしようとしたが、出血が止まりそうもないので、塩尻から出血退場(※)が命じられた。
すぐさま遼太郎の代わりに2年生の控えの選手がグラウンドへ走り出て、マッチドクターは遼太郎の腕を取って、グラウンドの外へと連れて行く。
遼太郎の母親も、心配そうに無言でその様子を見守る。
「私…、ちょっと様子を見てきます。」
みのりは荷物を座席に置いたまま、席を立った。
救護席と言っても、グラウンド脇に長机とパイプ椅子を置いた簡素なもので、遼太郎はそこに座らせられていた。
マッチドクターとそれを補助するメディカルサポーターの教員のもとへ、芳野側のマネージャーが駆け寄るのと同時に、みのりはそこにたどり着いた。
「あ、先生。」
マネージャーの女の子がみのりを見て声をかけた。
「芳野高校の仲松ですが、どんな様子ですか?」
マネージャーに頷いて見せてから、みのりがそう声をかけると、タオルで鼻から下を押えていた遼太郎は、驚いて目を上げた。
(※ 出血したプレイヤーは出血が確認された時点で、止血処理をする為に一時交代することになる)