Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
それは、みのりの願いでもあった。
いつもの遼太郎ならば、こんなことをされようものなら心臓が爆発しそうになるのに、みのりの穏やかで深い声は、逆に鼓動の安定をもたらした。
「分かった」というように、遼太郎は土で汚れた手を、鼻を圧迫するみのりの腕に添えて握った。
握る手に力を込めて、焦りを追いやり精神を集中する。
誰かが近寄ってくる気配を察して、みのりは顔を起こし、遼太郎は手を膝の上に戻した。
メディカルサポーターが傍で状況を見守っている。マネージャーも戻って、冷たいタオルと交換される。
それから1.2分してタオルを取って確認してみると、血は止まっていた。みのりは手にある濡れタオルで、遼太郎の顔や首に付いた血を、きれいに拭き取った。
「万が一、血が垂れてくるといけないから、脱脂綿を詰めときましょうか。ちょっと息苦しいけど。」
と言うと、メディカルサポーターはサッと脱脂綿を手渡してくれた。
後で取り出しやすいように、鼻の穴から少し見えるように綿を詰めると、ちょっと間抜けなその顔をマネージャーは笑いを含んで見ていた。