Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 ちょうどその時、マッチドクターが「やれやれ」といった様子で救護席へと戻って来て、みのりが処置をするのを安心したように、側で眺めていた。


「試合が終わっても、しばらくその綿は取っちゃダメよ。」


 遼太郎は立ち上がって、無言で頷く。そしてマウスガードを嵌め、ヘッドキャップを被り、メディカルサポーターに伴われてグラウンドへと向かった。



 観客席に戻ったみのりに、遼太郎の母親は心配そうな視線を投げかけた。


「鼻血だけで、骨が折れてるわけじゃありません。かなり出血してましたけど、大丈夫だと思います。」


 不安を払しょくするように、みのりは笑顔を作って頷いた。それを聞いて、遼太郎の母は胸をなでおろす。


「先生…、お洋服に血が付いてます。遼太郎が…?すみません。」


 そう言われて、みのりは自分の体を見下ろすと、袖口に飛び散った血が付き、お腹のところ辺りに擦れて付いたような血があった。


「ああ、大丈夫です。この後は帰宅するだけですから。」

「それに、頬に土が付いてますよ。」


「え…!?」


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