Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
さっき、遼太郎を抱き締めた時に付いてしまったのだと思い出し、みのりは顔が赤くなっていくのが分かった。
慌ててハンカチで拭おうとしたが、先ほど使ってしまって、そう言えば返してもらってない。
遼太郎の母親は、遼太郎と同じ優しい目でみのりを見つめ、指先でパラパラと頬の土を払ってくれた。
「あ、ありがとうございます…。」
みのりは恐縮して、恥ずかしそうに肩をすくめた。
残り時間は5分強、ロスタイムを入れても10分はない。同点で終わった場合は、くじ引きで勝敗が決まってしまう。もしそれで敗れてしまうようなことになれば、本当に悔いが残ってしまうだろう。
何としても、1トライでもいいから得点したいところだが、なかなかチャンスを生かすことができない。
「今度、遼ちゃんにボールが出せたら、アレで行ってみるか?」
二俣が遼太郎に話しかける。
「うん、スクラムの時やポイントにふっくんが絡んでる時は、ラインに来るのに時間がかかるから、その前にダブルクロスで時間を稼いでから…。2次か3次の攻撃で…。」