Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
このダブルクロスというパスの仕方は、もう一度遼太郎にボールが戻ってくる。戻ってきたときに二俣がラインに参加できていたら、〝アレ〟をしようというものだ。
まだ二人が2年生の時、二俣はロックでレギュラー、遼太郎はセンターの控えだった。
〝アレ〟とは、その時に二人の間で密かに申し合わせていたサインプレーのことで、単純なクロスだったが、二俣にボールを渡せるということは大きな利点になる。
ハーフウェイラインを相手側に少し食い込んだところで、モールができ、そのモールが膠着して動かなくなったので、レフリー塩尻はスクラムを命じた。芳野のスクラムハーフが投げ入れるので、芳野側の有利だ。
二俣は遼太郎に目配せする。
今までモールの押し合いをし、再びスクラムを組むことになったフッカーの衛藤は、肩で大きな息をしていたが、二俣に肩を叩かれ頷いた。
「21!」
仲間へと、遼太郎が指示を出す。絶対にこれで決めてやる!と言う気迫がこもっていた。
サインを読まれて、捕まってしまうことは考えなかった。相手よりも速く走り、速いパスを出せれば、絶対にうまくいくと思っていた。