Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 〝死んでもいい〟と思えるまでの真剣勝負の時に、いつものように優しい目などはしてられない。

 それにあれも、遼太郎の一部分。みのりはその一部分を含めて、遼太郎のすべてを受け入れたいと思った。


 観客席へ礼をするとき、遼太郎は、みのりの横に自分の母親がいるので、そちらを見ることができなかった。
 みのりを見る自分の視線を母親は読んで、きっとみのりへの気持ちを気取ってしまうと思ったからだ。


「みのりちゃん!」


 礼が終わった後の和やかな時間、無邪気な二俣は、今日はすぐ近くにいるみのりへと声をかけた。


「ちょっと、ひやひやしたけど勝ててよかったね。」


 そう声をかけると、二俣は自慢げな顔をし、遼太郎を引き寄せた。驚いている遼太郎をしり目に、肩を組み、


「俺と遼ちゃんと、この仲間がいれば無敵だぜ!」


と、言い放つ。
 みのりが失笑するよりも早く、二俣の母親が背伸びをして、我が子の頭をペチンと叩いた。


「調子に乗るんじゃない!」

「あたっ…!」


 保護者たちの間からも、笑いが起こる。みのりも楽しげに笑っている。
 みのりの表情が、この前のように沈んでいないことを確かめて、遼太郎は少し安心した。



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