Rhapsody in Love 〜約束の場所〜




 みのりは弁当箱を両手で持って、遼太郎の目の前に差し出した。


「どれか一つ、どれがいい?」


そう言われて、遼太郎は目を丸くする。


「くれるんですか?本当に!?」


 みのりは無言で頷く。

 遼太郎は、図々しい気もしたし、自分の弁当はすでに食べた後だったので、遠慮しようかとも思ったのだが、みのりの料理を食べてみたいという誘惑には勝てなかった。


「…じゃ、卵焼きを。」


 遼太郎がそう言うと、みのりは「うん」と箸で卵焼きを摘み上げ、ポンと遼太郎の口へと放り込んだ。

 口の中に広がるほのかに甘い出汁の効いた卵焼きの味覚に、遼太郎は他の感覚を忘れた。みのりの料理が食べられた感動に、胸が急に高鳴りだした。


「あっ、私の箸、そのまま使っちゃった。ごめんね。」


 みのりがそう指摘すると、遼太郎は食べ終えようとしていた卵焼きでむせそうになった。
 慌てて手で口を押える。


「大丈夫?お茶、飲んで。これは、まだ口を付けてないから。」


と、みのりはマグカップに淹れたお茶を、遼太郎に差し出した。

 お茶を飲んで一息ついた遼太郎は、赤い顔をして小さく頭を下げた。



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