Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
このぬかるんだグラウンドでタックルなどの練習を繰り返したのだろう。生徒たちのジャージはおろか、顔もヘッドキャップも既に泥まみれになっていた。
練習を見ながら、試合ではないラグビーをする遼太郎を、殆ど見たことがないことに、みのりは気づいた。
みのりが恐れをなした「戦う男」の顔ではなく、どちらかと言うと、みのりにラグビーのルールを教えてくれた時の表情に近い。
そんなことを思いながら遼太郎の顔を見ていると、不意に遼太郎が視線をよこして目が合った。
突然のことに、みのりが顔を作れずにいると、遼太郎の方がニコリと笑顔を見せてくれた。反射的に、みのりの心臓が跳ね上がる。
ここにいるはずのない自分が、ひどく場違いな感じがして、みのりは何だか恥ずかしくなった。
それをごまかすように、みのりは周りの様々な物、たくさんのラグビーボールや積み重なるコンタクトバッグ、黄色やオレンジのマーカー、少し離れたところにある部室などに、キョロキョロと目を移した。
ここは教室とはまた別の、遼太郎が高校生活を過ごしたもう一つの場所だ。放課後になると、遼太郎は毎日ここに来て、大好きなラグビーに夢中になった。