Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「解読されてない古文書って、昔の人が筆で書いたものですか?」
「そうそう、くずし字っていうか、ミミズ文字みたいなのもあるわね。虫食いだらけで、埃まみれの汚い古文書もあるのよ。これが。」
これまでの拙い知識の中で、遼太郎はそれがどんなものか想像を巡らせた。
「それを、先生は読めるんですか?」
「読まなきゃ、研究できないでしょ。読めなくても、何としても読むのよ。」
遼太郎は唖然として、みのりを見た。
「すごいですね。先生。」
「すごいわけじゃないわ。日本史学科を専攻したら、誰でも…、うんまあ、苦手な人もいたけど、大体みんな読めるようになるのよ。大学はそういうところなの。」
「そうなんだ…。」
漠然とした未知の領域は想像に難く、遼太郎は目を白黒させる。
「狩野くんは、大学でどんな勉強をするのかな?何を専門にするのかな?楽しみだね。」
みのりが優しく微笑むと、遼太郎は自分の未来を展望するよりも、みのりが微笑んでくれたことに、心が安堵で緩んだ。
「その前に、入試に合格しなきゃ、大学には行けません。」
おどけるように眉を動かして、遼太郎が現実を持ち出すと、みのりの笑顔はいっそう朗らかになった。