Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 生徒相手に、あそこまで自分をさらけ出してしまったことに、突然恥ずかしさが込み上げてきた。


――教師失格だわ…。


 もちろん自己嫌悪に陥っていたが、遼太郎の顔を見た瞬間、みのりの中に圧倒的な安堵感が満ちたのも事実だった。


 遼太郎が側にいる安心感に浸りたい…という、いつもみのりが打ち消していた願望に圧し負けてしまった。張りつめていたものがぷっつりと切れて、悲しいわけではないのに涙が止まらなくなってしまった。


 そんなみのりを、遼太郎は、戸惑うでもなくうろたえることもなく、ただ黙って受け止めてくれた。
 何があっても、遼太郎は自分のことを否定しない…。根拠はないけれども、遼太郎に対するそんな強い信頼感も、みのりの中にはあった。


 あのタオルで涙を拭った瞬間、ラグビーをする遼太郎のことを思い出した。

 あの試合の時、遼太郎を腕の中に包み込んだ感覚。
 一つの繭の中にいるような感覚がみのりの中に甦ってきて、今度はみのり自身が癒された。


 みのりは横を向いて、遼太郎を改めて見上げる。頼もしいその横顔に、みのりはつい見惚れてしまった。

 視線を感じた遼太郎が、みのりに目を合わせる。




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