Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 そんな遼太郎の優しさに、みのりの心は震えた。


 男の人にあんな風に送ってもらうなんて、何年振りだろう。
 「乗ってください」と言ったときの遼太郎の顔を思い出すと、守られているという感覚が湧いてきて、胸は切なく鼓動を速める。

 同時に、自分の中に湧き起こってくるそんな感情に、みのりは戸惑い動揺してもいた。

 その甘く切ない感情の渦の中に巻き込まれ、自分を見失いそうになったとき、


「プップッ!」


後ろの車からクラクションを鳴らされた。


 信号が赤から青になったのに気づかず、物思いに耽って車を発進させなかったためだ。

 急いでアクセルを踏み直すと同時に、みのりは幾分正気を取り戻す。心を鎮めて、冷静になろうと努めた。


 きっと今日はいろいろあって、みのりの心は疲れて弱くなっていたに違いない。
「恋の吊り橋理論」のように、ピンチを救ってくれた人に好意を持つことはままあることで、でもそれはその場限りの思い込みがほとんどだ。

 みのりの心の中に光ったほのかなときめきも、心が過敏になっていただけだろう。


 もし、あの時出会っていたのが同僚の古庄でも、浜田でも、同じように学校まで送ってくれていたかもしれない。
 遼太郎も、相手がみのりではなく澄子やその他の女子だったとしても、夜道を一人で歩いていれば送ってあげるに違いない。



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