Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
それに、石原に一方的に別れを決断してから、まだ2か月しか経っていない。石原への未練のような感情も、みのりの心の芯の方には残っている。
それなのに、今の状況で他の人に好意を持つなんてありえない。
独り身の寂しさを埋めようと、異性に対する感覚が狂ってしまっているのではないか…。
みのりはそんなふうに考えて、自分の中に過った甘く切ない感情を否定することに必死だった。
教師という立場上、何としてもこの感情は認めるわけにはいかなかった。
それでも、みのりは帰宅してから遼太郎に「ありがとう」を伝えたくて、めずらしくメールを送った。
『狩野くん、忘れ物があるって言ってたけど、本当は私を車まで送ってくれたんだね。ありがとう。でも、帰るのが遅くなっちゃってごめんね。明日も朝早く個別指導があるけど、無理のない程度に予習をしてきてね。』
なかなか自分の言いたいことが伝えられなくて、みのりは何度も文面を打ち直した。少し油断をすると、心の奥底にフタをしている感情が見えてしまいそうで怖かった。
メールを送った後、晩御飯を食べようとしたけれども、食欲もないので先にシャワーを浴びた。