Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 本当はみのりが家に帰ってドアに鍵をかけるところまで見届けたいと思っていたが、さすがにそこまでは出来なかったので、無事にみのりが帰宅していたことにホッとしていた。


『先生が無事に帰宅してて、安心しました。先生も明日早くなるけれど、よろしくお願いします。今日はゆっくり休んでください。』


 ドキドキとする胸の鼓動を伴いながら、遼太郎はメールを打った。打ち終わるとスマホを置き、机へと向かう。それから満たされたため息をつくと、明日の個別指導のために面接の返答を考え始めた。


 時間を置かずに着信音が鳴って、みのりは携帯電話を開いてみる。自分を気遣ってくれる優しい内容のメールを受け取って、みのりはまたしばらく、切ない心の痛みと闘わなければならなかった。



 次の日、吉長への対処について、緊急の職員会議が開かれた。

 生徒が問題を起こした後の処分を決める職員会議は、いつも緊迫した空気が漂うが、今回はカンニングや喫煙、万引きといったよくある事例ではないので、いつもにもまして重苦しい。


 生徒が妊娠してしまうことは、高校ならばたまにあることではある。しかし、その場合も、出産前に退学してしまうのがほとんどだ。

 今回のように、在学時にしかも学校生活の場で状態が悪化し、そのまま出産してしまうなんて、管理職にとっても初めてのケースだったようだ。




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