Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
吉長は、ぽっちゃりしているせいもあって、周りの誰もが妊娠に気が付かなかった。
相手は他校のやはり高校2年生で、その男の子も吉長が妊娠していたことは知らなかったようだ。突然突きつけられた現実に、相手も戸惑い、産まれ出た赤ちゃんのために結婚などは到底考えられない…ということだ。
また、吉長はその体形ゆえに妊娠高血圧症候群いわゆる妊娠中毒症になっていたらしく、その合併症として常位胎盤早期剥離を引き起こしてしまったらしい。
みのりは、同じ女性の体のことだけれども、自分には妊娠の経験がないので、どうしてそんなことになるのかさえも解らなかった。
職員会議の議題は、吉長の処遇をどうするか…ということだ。
吉長の件は、不純異性交遊という範疇では収まらないし、通常妊娠した生徒は退学をするというのが、今までの事例らしい。
吉長もその両親も、今はとりあえず休学し、落ち着いて体調も元に戻ったら、復学したいと望んでいるらしかった。
しかし、管理職の意向は「退学ありき」という感じで、吉長の退学処分は決まりつつあるかに思えた。
――ちょっと、待って!
クラス担任も何も異を唱えないので、みのりは焦った。このままでは、本当に吉長は退学になってしまう。本人が復学を望んでいるにも関わらずに。