Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「待ってください。」
みのりは手を挙げた。
これまで教員になってから、幾度となく職員会議には出席してきたが、ただそこにいるだけで、賛成か反対かの挙手をする程度のことしかしてこなかった。
だけど、この日のみのりは吉長のために、初めて職員会議で発言をしようとしていた。
「あの…。これまで妊娠して退学していった生徒たちは、自主退学という形だったと思います。吉長さんは本校で勉学を続けたいと望んでいるわけですから、彼女が相手の方と正式に結婚をする…と言っても18歳になるのを待たねばなりませんが…。または産まれた赤ちゃんをご両親の養子にするなどの法律的な対処がきちんとなされれば、復学も認めるべきではないかと思うのですが。」
会議室の中に、ざわめきが起こる。校長や教頭も、顔を見合わせて困惑の色を浮かべた。
みのりはまだ足りないとばかりに言葉を尽くして、さらに説得攻勢にでる。
「子どものいる人は、高校で勉強する機会が与えられないのですか?結婚して子どものいる人が、高校受験をして入学することは可能なはずです。それに、命の尊厳という視点からも、今回のことを退学という形で切り捨てては、他の生徒への教育上、プラスにはならないと思います。」