Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 会議の間中、自分の中で渦巻いていた意見を切々と述べると、みのりはストンと腰を下ろした。
 管理職をはじめ職員の間に、シーン…と沈黙が流れる。


 それから、クラス担任、2年部の学年主任も、みのりの意見に肯定的な主旨の発言をした。

 管理職は、うーん…と頭を捻っていたが、もう一度管理職と生活指導部の主任と学年主任を交えて、話し合いが持たれることになった。


――『やっぱり退学…』という結果にならなければいいけれど…。


 そんな一抹の不安はあったが、今はとりあえず退学の危機は回避できたと、みのりは少し胸をなでおろした。



 どこからどう漏れてしまうのか、この吉長の噂は、新人大会の2日後には生徒の間で取りざたされ、さすがに噂に疎い遼太郎の耳にも入ってきた。
 噂には尾ひれがつくものだが、救急車まで出動したというから大事には違いない。


 あの夜のみのりはそれに対処した帰りで、緊迫から解放されて泣いてしまったのだと解って、遼太郎は心が痛んだ。

 泣いたときのみのりの震えの記憶が甦ってきて、遼太郎の体は痺れるように硬くなった。

 そして、あのきれいな涙を思い出すたび、胸が突き上げられる。
 泣き顔の美しさを見て、もちろん愛しさは募るが、それ以上に、もうこれ以上泣いてほしくないという庇護の思いも強く感じた。


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