Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
そう言ってみのりが励ますと、遼太郎は黙って何度も頷いていた。
「面接の練習は、何度もやってて損はないよ。後々、就職活動でも役に立つからね。」
「そうか…、就職活動も…。」
どちらかというと、入試よりも就職活動の面接の方が、重要で切実な問題だ。
遼太郎は、今はまだ考えてもいなかったが、そう遠くない将来、必ず訪れる就職活動のことを持ち出されて、息を呑んだ。
「就活する頃の狩野くんは、もう大人になってるけど、どんな風になってるんだろうね。どんな仕事をしようと思っているのかなぁ…。」
みのりにそんなふうに言われて、遼太郎は自分の将来の希望に胸を弾ませるよりも、言いようのない不安がその胸を去来した。
今のみのりと同等に並ぶためには、ちゃんとした職業に就いて一人前になっていなければならない。
そうでなければ、自分はみのりから〝一生一緒にいられる人〟として見なされないだろう。
そのためには、今から自分は大学へ行き、それから就職しなければならない。これから四年以上もの年月が必要だ。
その間、みのりがずっと独りでいるとは限らない。
年齢的にも、周りから結婚を急かされている状況からも、自分が大学へ行っている間に、みのりが結婚してしまう可能性はとても濃い。
何よりも、こんなに綺麗で気立てのよいみのりを、周りの男たちが放っておくはずがない。