Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 今、遼太郎の目の前には、成さねばならないことが沢山あり、またそれが遼太郎にとってはとても大きなことなので、そんな将来のことにまで思いが及ばなかった。今の自分を、みのりに認めてもらいたいばかりだった。


 だけど、それだけじゃダメなんだと、この時遼太郎にははっきり分かった。
 焦りのような悲しいような、何とも言えない不安な気持ちが顕れた目で、遼太郎がみのりを見遣る。


「そんな顔しなくても、就活する頃の狩野くんは、今よりもずっと成長してて、しっかりした大人になってるから、心配しなくてもいいと思うよ。そのためには、大学での時間をどう過ごすかだよね。でも、大丈夫。狩野くんはきっと、いい意味ですごく変われると思う。」


 みのりのいつもの励ましと背中を押す言葉に、少しは癒されはするが、みのりのことに関する不安は払拭されない。


「…私は、あと3年はこの学校に勤務して…、狩野くんが大学を卒業するときは他の高校に転勤してるけど、きっと今と同じことしてるわね。変わりたくても変われないというか…。もっといい先生に成れていればいいけど、歳は確実に取るから、オバサンにはなってるわね。」



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