Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
遼太郎を笑わせようと、みのりは自虐的なことを言ってみたが、却って遼太郎は不愉快そうな顔をした。「あれ…?」と、みのりも表情を曇らせる。
「先生は、オバサンなんかになったりしません。」
遼太郎は断言する。みのりは、目をパチパチと瞬かせた。
「何でそんなふうに言えるの?4年たったら、私34歳になってるのよ?」
それはみのりの単純な疑問だった。
「オバサンというのは、年齢でなるものじゃないと思います。俺のクラスの女子でもオバサンみたいなヤツはいるし。」
目を丸くして、みのりは感心した。
「すごいわ!狩野くん。それ、的を得てる!『ヤツ』なんて、女の子に言っちゃあいけないけど。」
「それに…」
と、遼太郎は言いかけて言いよどむ。
「それに…?」
もっと遼太郎のオバサン論を聞きたくて、みのりは腕組みをして身を乗り出した。
「それに…、先生はそんなに綺麗だし、とても可愛いし……」
言いながら、遼太郎は急に顔に血が上っていくのを感じた。「だから、オバサンにはならない」と続けたかったが、言葉の途中で、息が苦しくなって口をつぐんだ。
こんな遼太郎の褒め言葉を、いつものみのりならば、「お世辞が上手ね」と軽く受け流していたけれど、この日のみのりは敏感に反応した。