Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「か、可愛い……!?」


と、遼太郎の言葉を繰り返して、腕組みをしたまま固まって赤面する。

 遼太郎の口から「可愛い」と言われたことを、年甲斐もなく妙に意識してしまった。

 これまで男子生徒に「綺麗だ」とは言われたことは何度もあるような気がするけれど、「可愛い」と言われたのは、初めてかもしれない。他の男子生徒そう言うのであれば、「ありがとう」と流してしまっていたと思う。


 でも、遼太郎がそんなふうに思っていたなんて……。

 みのりは自分が遼太郎の目にどんな風に映っているのか、突然気になり始めた。


 みのりに反復されて、遼太郎は自分が言ったことを再認識する。言葉を最後まで続けなかったから、却って違った意味にも取れそうだ。これでは告白しているのと、あまり変わらない。


 抱えきれず今にも溢れ出しそうなほどの自分の気持ちを、みのりに知られても構わないとも思ったが、まだ今の状態では優しく拒否されるのは、火を見るよりも明らかだ。


 それでも、今まではこんなことを言っても無関心だったみのりが、このように反応してくれたことは、遼太郎の期待感を大きなものにした。


 キーンコーンカーンコーン…


 視線を絡ませて赤くなっている二人の間を、職員朝礼の始まるチャイムが鳴り響く。


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