Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「あっ!いけない。もう時間?」


 みのりが反射的に立ち上がると、膝に載せていた遼太郎のノートを落としてしまった。
 とっさに二人が同時に手を伸ばして拾い上げようとしたところ、お互いの頭が、

ゴチン!

と、ぶつかった。


「…ったぁ…。」


 みのりが額を片手で押さえる。


「先生!大丈夫ですか?」


 心配そうに、遼太郎がみのりを覗き込む。遼太郎の顔が近づいて、みのりは露骨にうろたえた。


「…だ、大丈夫よ。狩野くんこそ、大丈夫?」


「俺はこんなの。石頭だから。先生、どこ打ちました?見せてください。」


「いや、私も大丈夫だって。」


と、みのりが言うにも関わらず、遼太郎はみのりが自身の手で額を押えているのをずらして、額の髪をかき分け、打ったところを確認した。


「ああ、赤くなってます。たんこぶ出来るかも…。すいません…。」


 みのりは遼太郎のその行為に驚いて、痛みもどこかへ吹っ飛んでしまった。


「本当に大丈夫。狩野くん、心配しすぎ。」


 そう言ってみのりが笑うと、遼太郎はハッとして手を引っ込めた。
 自分のしていたことに気がついて、恥ずかしさが遼太郎の足元から駆けあがってくる。


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