Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
みのりは急いで授業道具をまとめ、足早に教室を出ようとした。戸口のところで、
「衛藤くん!明日の試合、頑張ってね!!」
と、衛藤へ声をかけると、衛藤は驚いて顔を赤くし会釈をした。
遼太郎がみのりを目で追って、出ていった戸口の方を見遣っていると、
「遼ちゃん。みのりちゃんが、これ、忘れてるぜ。」
と、二俣が教卓に残されたチョークケースを指差した。
遼太郎はとっさにチョークケースを掴み、みのりの後を追いかける。
「先生!これ、忘れてます。」
階段を降りかけているみのりを呼び止める。振り向いたみのりは、今朝の時と同じように驚いた顔をしていたが、遼太郎の手にあるチョークケースを見て、恥ずかしそうに首をすくめた。
「また、やっちゃった…。よく忘れちゃうの。ありがとう。」
そう言って出された手に、遼太郎はチョークケースを載せると、会釈をして踵を返した。
「狩野くん!」
とっさにみのりが遼太郎の後ろ姿を、大きな声で呼び止めた。今度は遼太郎が驚いて振り向く番だった。